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新潟家庭裁判所長岡支部 昭和33年(家イ)96号 命令

申立人 中島トリ(仮名) 外一名

相手方 高山シノ(仮名) 外一名

主文

上記当事者等は、昭和三七年一二月三一日まで被相続人高山太郎の遺産につき分割をしてはならない。

理由

調停の席上における当事者等の陳述、本件記録および家庭裁判所調査官寺沢潤二作成の調査報告書によると、被相続人高山太郎は、有限会社高山屋商店が○○銀行から金員を借用するに当り、同人個人の所有の北魚沼郡○○町大字○○町字○○○一四〇三番の三所在木造板葺三階建店舗一棟に根抵当権を設定していたのであるが、同人死亡後、○○銀行は手形貸付金一〇〇万円の債権に基き抵当権を実行するため、同店舗一棟に対し競売手続をとるに至つた。当事者等は協議の結果、○○銀行に対する前記債務を弁済するため、同店舗およびこれに隣接する物置車庫等を数区に改築して貸店舗とし、いわゆる名店街と名づけて、すでに数店から店舗貸料金を受け取つていること、相手方高山理一と○○銀行との間に前記債務を月賦弁済するについての話合ができていること等を認めることができる。

そうすると、当事者等が○○銀行に対し店舗貸料金等をもつて、誠実にその債務の弁済を続けるかぎり、○○銀行が、前記競売をいそぐ理由も見当らないし、その他諸般の事情を綜合すると、本件遺産分割は、○○銀行に対する債務を完済して後行うのが適当と考えられるから、昭和三七年一二月三一日まで被相続人高山太郎の遺産について分割することを禁ずることとし、主文のとおり調停前の処分をする。

(家事審判官 石藤太郎 調停委員 志賀定一 調停委員 太刀川彦蔵)

(注意) 当事者等は正当な理由がなくこの処分に従わないときは、五、〇〇〇円以下の過料に処せられることがある。

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